探偵はどこまで調査できる?探偵が行う調査の違法性

探偵に依頼すれば、どのような手段を使ってでも浮気を暴いてくれる。
そのように考えている人もいるかもしれません。
しかし、実際はそういうわけにはいきません。もちろん、探偵は可能な限りできることをして、調査を行います。しかし、中にはできないことというのも存在するのです。
探偵は、警察と違い特別な権限が与えられているわけではありません。
つまり、探偵は私たち一般人と同じということです。どのようなケースであっても法律に背くことはできません。
今回は、探偵ができる調査とできない調査について紹介していきます。
GPS発信機を使うのも違法?

探偵が調査で使う道具として最初に思い浮かぶのがGPSという人も多いかもしれません。
実際、調査にはなくてはならないアイテムの一つではあるのですが、このGPS発信機も場合によっては違法になる可能性があるのです。
GPSを使う時に、違法か違法でないかを分けるのは依頼者と調査対象者の関係性にあります。もし、依頼者と調査対象者の関係性が恋人であれば、GPSを使うことはできません。
なぜなら、違法な行為になるからです。
どのような違法性があるのか?
しかし、二人の関係が婚姻関係にあれば、設置する場所によって違法ではなくなるのです。
その理由は、夫婦間の持ち物に対する考え方にあります。夫婦になると、物によっては共有財産だと法律で判断される物がでてきます。それが、家や車などです。
共有財産ということは、相手の物であると同時に自分の物でもあるということ。
相手が乗っている車であっても、結婚してから夫婦で購入したものであれば、自分の持ち物でもあるということなので、GPSを取り付けても問題がありません。
これが、恋人同士だとそういうわけにはいかなくなります。
いくら恋人同士であっても、相手の持ち物は相手の物だからです。
相手の物は、私的な情報であり、みだりに公開されない権利を持っていますから、GPSを取り付けるのはプライバシーの侵害になります。
そして、他人の持ち物に細工を施してGPSを取り付けた場合は、器物損壊罪にあたります。
ここで、一つの問題がでてきます。夫婦だからといって、何でもかんでも共有財産にはならないということ。
例えば、相手にプレゼントした鞄などは、特有財産として判断される為、GPSを取り付けることは違法となります。
そしてもう一つ重要なポイントが、GPS発信機の取り付けや回収などの作業自体はあくまでも依頼者本人が行う必要がある、ということです。探偵は調査対象者とは第三者関係なので、依頼者から頼まれたとしても直接GPSの取り付けなどはできません。
また、調査対象者と第三者関係にある探偵は、調査対象者の居住地に勝手に忍び込んでGPS発信機や盗聴器などを使って調査することもできません。他人の居住地に侵入するのは、住居侵入罪になるからです。
そのため、探偵は依頼者の手によって取り付られたGPSの情報を元に、探偵が尾行や張り込みなどの適切な調査を行うのです。
探偵が引き受けられない依頼

探偵だからといって、どのような調査でも行えるわけではありません。
中には、調査すること自体ができない依頼もあるのです。
つまり、引き受けることができない依頼もあるのです。
では、どのような依頼が引き受けられないのでしょうか?
それが、以下のものとなっています。
- 他人を陥れることを目的とした調査(復讐や不法行為を手助けする調査)
- 差別を目的とした出自調査
- 国籍に関する調査
- DV被害者の所在調査
- ストーカー被害者の所在調査
- 反社会組織や団体からの依頼
上記で紹介した依頼を引き受けてくれる探偵事務所は基本的に存在しません。
しかし、依頼者の中には自分の身元を隠したり、嘘の理由を作って依頼してくるケースもあります。
中でも、DVやストーカー被害者の所在調査というのは、とても難しい問題です。
もちろん、配偶者や家族などからDVやストーカーの被害を受けていて、加害者から逃げるために行方をくらましていた場合、第三者がその事実を知ることは難しい、という理由もあります。
ですが、根本的な問題はそこではありません。
何度もお伝えしている通り、探偵であっても法律に背くことはできませんし、また特別な権限も与えられていません。
なぜなら、探偵は弁護士と違って、探偵になるために必要とされる資格がないからです。

探偵になるには、公安委員会に届出を行うだけです。つまり、探偵について知識のない人でも、届出さえ行えば探偵と名乗ることができるというわけです。
探偵が「一般人と同じで、特別な権限がない」とお伝えしていた理由がこれでお分かり頂けたのではないでしょうか。
探偵届け出の参考:探偵事務所を開業するには何が必要ですか?
ですが、一方で、探偵は「探偵業法」と呼ばれる法律によって規律されています。探偵業法には、探偵が業務を営むうえで守るべきルールが定められています。
そこには、調査の結果が犯罪や差別に繋がることを知ったときは、依頼を引き受けてはならないことも記載されています。
DVやストーカーは、ストーカー規制法やDV防止法などの法律があるように、取り締まるべき危険な行為ですから、探偵は調査することができないのです。
そして、出自調査や国籍調査などは差別に繋がる恐れのある調査ですから、探偵は調べることができないのです。
探偵業法の参考:探偵業の業務の適正化に関する法律|千葉県警察
だからこそ、探偵事務所は人探しの依頼があった時には念入りに、事前調査や依頼者からの話を聞きながら矛盾点がないかの確認を行うのです。
中には、依頼者にDVやストーカーをしていないという契約書を書いてもらう事務所もあります。
探偵が結果を出せる理由

これまで紹介してきたように、探偵だからといって、何か特別な権限があるわけではありません。
ハッキリといってしまえば、私たちができることと同じことしかできないのです。
では、探偵に頼む必要がないのではないか?と考える人もいるかもしれません。
しかし、それは大きな間違いです。結果を出せるのには理由があります。
その理由こそ、積み重ねてきた実績とノウハウにあります。過去の調査経験があるからこそ、探偵は瞬時に判断しながら最も効率がいい調査を行っていくことができるのです。
そして、それが調査成功の肝となっています。
調査に必要な尾行も素人が簡単にできるものではありません。対象者にバレないように尾行するということは、それほど難しいものなのです。
探偵は、プロとして尾行を実行します。普段から訓練を積み、バレないようにするための方法や見失わないための策をいくつも用意しています。
できることが限られていても、与えられた条件下で最善を尽くした調査を行う。探偵の強みはこの部分にあるのです。
まとめ
探偵にもできない調査というものが存在します。
探偵だからといって、特別な権限があるわけではないので、調査方法としてできることは私たち一般人と同じです。つまり、法律で禁止されていることはできないということ。
他人の持ち物にGPSを仕掛けることはできませんし、他人の郵便物を勝手に見ることもできません。
また、尾行中であっても制限速度を無視するとスピード違反で捕まります。
まして、他人の敷地に勝手に入るなんてことも、もちろんできません。
しかし、それでも探偵が結果を出し続けているのには理由があります。その理由が、これまでの経験とノウハウ。
できることが同じだからといって、侮ってはいけません。法律の中で最善を尽くした調査を行って結果を出す。それが、探偵という職業なのです。